第三章防災対策 また、東京都は、道路などの安全確保後の徒歩帰宅を支援するため、都立学校を、また、隣接県とともにコンビニエンスストアやファミリーレストラン等を「災害時帰宅支援ステーション」として位置付けている。この災害時帰宅支援ステーションでは、災害発生時、水道水の提供、トイレの使用、情報提供などにより、徒歩帰宅者の支援を実施する。(2)駅前滞留者 交通機関の停止により、都内の主なターミナル駅やその周辺の地域にはそれぞれ3〜47万人程度の帰宅困難者の滞留が想定される。 しかし災害発生直後は、都や区市町村は救命救助・消火活動等に重点を置くため、滞留者に対する公的な支援には限界がある。そのため、駅周辺の事業者から●帰宅困難者対策 東京都では「東京都帰宅困難者対策条例」を制定し、帰宅困難者対策に取り組んでいる。(1)帰宅困難者 「首都直下地震等による東京都の被害想定」では、大地震発生時にはほとんどの交通機関が停止し、約517万人の帰宅困難者が発生するとしている。 これら帰宅困難者が都心部から居住地に向けて一斉に移動を開始した場合や、鉄道駅周辺や路上に多くの人が滞留した場合には、帰宅困難者が危険にさらされるだけでなく、救命救助活動の妨げにもなる。 このため、東京都は、都民や事業者の努力義務を定めた「東京都帰宅困難者対策条例」を制定し、自助・共助に基づいた帰宅困難者対策を進めている。現在、平成25年4月施行の条例の普及を図っている。[東京都帰宅困難者対策条例の概要]①都民の取組・災害時はむやみに移動を開始しない。・家族との連絡手段の確保・防災活動への協力②事業者の取組・従業員の一斉帰宅の抑制・従業員の3日分の水・食料等の備蓄・駅や集客施設での利用者保護・生徒・児童の安全確保③東京都の取組・一時滞在施設の確保・情報提供体制の整備(3)事業所などの対応 「組織は組織で対応する」という原則を、各組織に徹底させることが必要である。 具体的には、事業者や学校などの組織は、組織の責任において安否情報や交通情報を収集し、従業員や生徒の安全確保に努め、発災直後の一斉帰宅行動を抑制する。3日間程度の食料や必要物資を備蓄し、災害時の対応マニュアルを作成し、体制整備に努める。従業員を一時的に自社に留め、事業所の応急・復旧要員として活用して事業再開に努める一方、留まった従業員は、可能な範囲で地域の応急・復旧活動にも参加する。 また、買い物客や行楽客など、組織に属さない外出者に対する社会的責任として、事業者などは可能な範囲で待機できる場所や飲料水、トイレなどを提供する。●エレベーター閉じ込め対策 昭和56年6月から、エレベーターには地震時に自動的に最寄り階に停止し、一定時間後に戸を閉めて運転を休止する「地震時管制運転装置」が設置されることになっている。 ところが急行エレベーターや最寄り階までの距離が長かったり、最寄り階に停止する前に故障すると、階と階の間で閉じ込められてしまう可能性がある。東日本大震災の際、高層ビルの多い都内では87件の閉じ込めが発生したが、首都直下地震による被害想定では、最大で約7,500台のエレベーター閉じ込めが発生すると想定されている。なる協議会や区市町村により、地域のルールに基づく混乱防止に取り組むことが重要になる。[基本となる地域のルール]①組織は組織で対応する 事業所、学校などの従業員、生徒などが所属する組織で対応する。②地域が連携して対応する 協議会が中心となり、地域で対応する。③公的機関は地域をサポートする 都、区市町村、国が連携して、地域の対応を支援する。103
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